人手不足や生産性の向上などの解決策として、多くの企業が注目している「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」。DXとは、デジタル技術を用いて社員の働き方、あるいはビジネスモデルを抜本的に変革する取り組みです。
全国にイタリアンレストランを展開する株式会社エスエー・エーエスも、DXに邁進している企業のひとつ。同社は、長年続いたFAXでの売上集計や手書きの伝票といったアナログな業務を一掃するため、POSレジシステムの刷新を決断しました。
今回は、同社で経理を担当し、店舗のデジタル化を推進した江連 朱理氏に、なぜ今、POSレジ導入が必要だったのか、という背景から、現場にもたらされた成果の全貌を詳しくお聞きしました。
目次
- POSレジアプリをきっかけに始まったDXの取り組み
- 「紙とFAX」からの脱却という必然
- 中古レンタルを活用して初期費用を大幅に抑制
- 集計業務75%短縮に加え経営判断のスピードも向上
- 『人にしかできない価値提供』に注力
POSレジアプリをきっかけに始まったDXの取り組み
「イタリア式食堂イルキャンティ」をはじめ、全国で約50店舗の運営に携わっている株式会社エスエー・エーエス。1972年に東京・笹塚にイルキャンティ1号店をオープンして以来、50年以上にわたり愛され続けています。
「オープン当時の日本では、まだイタリア料理やワインが身近ではなかったので、当社の代表は『もっと多くの人に、ワインと料理を囲んで心ゆくまで食事を楽しめるように』という思いから、日本人の味覚に寄り添ったイタリア料理を追求しました。そうして生まれた『真夜中のスパゲッティ』は、今も人気の看板メニューです」
そう話すのは、株式会社エスエー・エーエスで経理を担う江連 朱理氏。店舗運営に関わるデジタルツールやサービスの導入にも携わり、DXを推進するメンバーのひとりです。
伝統の味を守り続ける同社が、DXに舵を切ったのは2025年4月のこと。新サービスの利用がきっかけだったといいます。
「以前から予約管理にiPadを使用しており、お客様からの注文はスタッフがハンディ端末で行っていました。ただ、デジタルツールといえばそれくらいで、手書きのメニューや紙の伝票は残っていたんです。そんななか、レジ機能やオーダー、売上の集計ができる『POSレジアプリ』をフランチャイズ店舗の方に紹介されたのをきっかけに、DXの推進が本格化しました」
「紙とFAX」からの脱却という必然
POSレジアプリを使ってスタッフの負担を軽くする――まさにDXの第一歩です。この刷新は、現場の効率化と本社業務の非効率という、長年の課題を解決するために必要でした。
「昨年までは、本社にFAXで送られてきた約50店舗分の『売上速報』を私たちがエクセルシートに打ち込む作業に1時間かかっていました。もちろん、レジロールや紙伝票のコストも膨大でした。このPOSレジアプリは、注文、伝票管理、売上集計までをiPad上で完結できるため、これまでのアナログな課題を全店舗で一掃し、現場スタッフの不要な移動や待機時間を削減できる。そのため、完全デジタル化を推進する強力な一歩となると考えました」
しかし、システム導入には越えなければならない現実的な壁がありました。アプリを入れるためのiPadを大量に確保しなければならなかったのです。
「アプリの運営会社からは、各店舗にiPadとiPhoneを2台ずつ支給されましたが、圧倒的に不足していました。たとえば、レジ用に1台、キッチンに1台置くだけで支給分がなくなるため、ドリンクなどのポジションには配置できません。そうなると、忙しい時間帯にはスタッフがポジション間を行き来する必要が生じ、かえって業務効率が悪くなる可能性がありました。そうして計算していくと、1店舗あたり最低でも5台のiPadが必要だと判明したんです」
中古レンタルを活用して初期費用を大幅に抑制
必要な端末台数が判明したものの、課題は端末調達のための初期費用でした。じつは同社では、アプリのバージョンアップの影響で古い端末が使用できなくなり、新品のiPadの購入に数十万円を投じた直後だったため、短期間のうちに同様の追加投資を行うという判断は難しい状況でした。
そんななか、ある社員の方のひと言が転機をもたらします。
「それまで購入以外の入手方法を考えたことがなかったのですが、社員の一人が『iPadってレンタルできないんですか?』と言ったんです。そこで初めて、端末のレンタルサービスがあることを知り、課題解決の糸口が見えました」
同社は、高品質な中古端末をレンタルできるサービスを活用することで、初期費用を抑えながら、必要な台数を確保しました。
「“中古”と聞いていたので、実物を見るまでは品質に不安もありましたが、実際に届いた端末は、キズも画面の割れもなく新品同様のクオリティで驚きました。また、端末の故障時のトラブル対応を一本化できたので、本社側の負担はほとんどなくなりました」
集計業務75%短縮に加え経営判断のスピードも向上
POSレジアプリの導入をきっかけに、急速にDXが進んだエスエー・エーエス。その効果はさまざまな面で現れています。
「デジタルツールの導入によって“紙”の運用コストが大幅に削減されました。特に、昨年まで約50店舗分のFAXをエクセルに手打ちで打ち込んでいた本社での売上速報の集計作業は、、1時間かかっていたものが15分まで短縮できたんです。おかげで、人手は増えていませんが他の業務に人員を充てられるようになりました。加えて、全店舗のデータがリアルタイムで可視化されたことで、経営判断のスピードも上がりました。『今何が一番売れているか』『売り上げに貢献しているメニューは何か』といった統計が瞬時に取れるようになり、迅速なメニュー改善や経営戦略への活用が可能になりました」
また、経理を担当する江連氏は、レンタルサービスを活用したことによる費用の安定化という側面も強調します。
「急な端末購入による費用の発生がなくなり、毎月の固定費が安定したことで、店舗ごとの収支管理が明確になりました。安定した費用だと、会計の専門知識がない店舗責任者でも収支の状況が把握しやすく、非常に分かりやすいというメリットがあります」
『人にしかできない価値提供』に注力
4月からは、店内モバイルオーダーも開始。お客様自身のスマホで注文するため、テーブルごとの会計伝票用紙も不要になりました。
「モバイルオーダーは、お客様の好きなタイミングで注文していただけるので“オーダーの取りこぼし”がなくなり、売上アップにもつながっています。また、おすすめ品の写真をトップに置き、メニューの解説も詳細に記載できるようになりました。お客様におすすめを訊かれても対応が難しい新人スタッフもおり、モバイルオーダーがその部分を担ってくれることで、全店でサービスの品質を一定に保つことができています。オーダー取りや伝票管理といった単純な作業が削減されたことで、スタッフは料理のクオリティ管理や、お客様への目配りといった『人にしかできない価値提供』に時間を割けるようになりました。人手不足が続く中、デジタルを活用して労働効率を最大化できたことは、大きな成果だと感じています」
今後も、より現場のスタッフが働きやすくなる仕組みを作っていきたい、と江連氏は語ります。
「現在の課題は乗り越えましたが、各店舗の日報を本社に送る作業を簡単にしたり、発注管理や売上管理の一元化など、DXで改善できそうな作業はほかにもあります。今は、当社にとって大きな転換期と捉えて、一つひとつ取り組んでいく予定です」
POSレジアプリをきっかけに始まった同社のDX。それをコスト面や利便性で後押しした端末の中古レンタルサービス。初期費用を抑え、安定した端末運用を実現する具体的なレンタルサービスの内容と、事例は、ぜひ『Belong One サービスサイトの導入事例』でご確認ください。