医療DX推進を阻む
見積1億円の壁を乗り越えた
“中古レンタル”という選択

病棟前にて、柔らかな笑顔を見せる田場様

一刻を争う医療の現場では、デジタル技術を用いて医療の質を高める「医療DX」に注目が集まっています。社会医療法人 三上会 東香里病院もまた、院内のDXに力を入れている病院のひとつです。そんな同院では、新電子カルテの導入を機に、医師や看護師など資格職への『iPhone個人貸与』を計画しました。限られた予算のなかで200台もの端末を調達するために選んだのは、新品での端末購入ではなく、中古端末のレンタル「Belong One」でした。
今回は、同院の情報企画室 主任 田場 盛隆 様と専従の臨床工学技士 角屋 智美 様に、Belong One導入の経緯と、その効果についてお聞きしました。

課題

  • 「理想」と「予算」の乖離が生んだ総額1億円の導入コスト
  • 「中古スマホ」への根強い不信感と品質への不安
  • 「扱いが雑で故障が頻発する」という故障リスク

解決策

  • 中古端末のレンタルを選んで劇的な初期コスト削減
  • 「検品の可視化」による信頼と「伊藤忠グループ」という安心
  • 個人貸与による「自分事化」で故障リスクを最小化

効果

  • 新品購入との比較で実現した約956万円の予算削減
  • 導入から2年が経過した現在も故障・バッテリー劣化ほぼなしの高品質
  • 端末を大切にする文化の定着と現場発のアプリ開発によるDXの加速

電子カルテの早期導入から始まった医療DX

病院の敷地内に咲く花と、背後に見える病棟

大阪府枚方市に位置する東香里病院は、透析治療と精神科の双方に対応できる希少な医療施設。精神疾患を抱える患者さんのなかには、3〜4時間ベッドで安静に過ごす透析治療の継続が難しいケースも少なくありません。同院はそうした方々への専門的なケアが可能なため、近隣のみならず遠方から治療を受けに来る方も多いといいます。そんな同院の先進的な取り組みは、診療体制だけにとどまりません。

「東香里病院は周囲の病院に先駆けて早い段階で電子カルテを導入しました。三上 聡司 院長が当院を引き継いだ2011年当時、大学病院では当たり前だった電子カルテも、当院ではまだ「紙」。院長は『患者さんへのサービス向上のためにも、電子カルテ導入による業務効率化は必須』と考え、その保守管理を行う部署として新設したのが情報企画室でした」(田場様)

当時、病院のWebサイト制作に関わっていた田場様が主任に指名され、そこから電子カルテサーバーのリプレイスや新システムの導入といった、医療DXへの挑戦が始まりました。

“端末の個人貸与”を実現するために課題となった調達コスト

モバイルカルテの導入を知らせる院内掲示

そして2021年、情報企画室に新たなミッションが課せられます。きっかけは、三上院長が参加した医療DXのユーザー会でした。

「他院でスマートフォンを活用し、シームレスに連携している事例を目の当たりにした院長は、週明け早々私のところへ来て、『みんな入れている。うちも今すぐ導入しよう!』と。」

院長が導入を即決した新しい電子カルテシステムは、院内のどこにいても端末上で電子カルテが閲覧でき、チャット形式でのやりとりも可能なツールでした。

田場様はさっそく、2024年の導入実現に向けて動き出しましたが、ここで大きな壁にぶつかります。

「院長の理想を反映した結果、見積もりが総額約1億円に達してしまったんです。さすがに高額すぎるため、どこをコストカットするべきか頭を抱えました」

なかでも大きな課題となったのが、200台にも及ぶ端末の調達コストでした。

「導入にあたり、三上院長には『常勤の医師をはじめとした資格職全員に、端末を個人貸与したい』という意向がありました。共有端末だと、いざ使いたい時に端末を探しに行く手間が発生してしまい、DXによる業務効率化が半減してしまうと考えたからです」

さらに、機種選定も妥協はできませんでした。制御のしやすさに加え、ノーコードでアプリを作成できる「プリザンター(※)」でOCRツールを構築するのに、端末をiPhoneに統一するのがベストだったのです。

※株式会社インプリムが提供するサービス【無料で使えるノーコードツール”プリザンター”公式ページ

「導入にあたり、iPhone SE (第2世代)200台の調達を検討しました。職員が手元の端末で、即座に電子カルテを確認できる環境は絶対に実現したかった。バッテリーの寿命を考え、更新時期となる3年間の運用を想定して試算したところ、購入の場合は73,000円。総額は約1,460万円にのぼりました。理想は下げられないのに、予算は足りない。まさに絶望的な状況でした」

こうした事情から、田場様はコストを抑えつつ、200台という大量の端末を調達するための手段を探し始めました。

「すでにその新しい電子カルテシステムを導入している他院に話を聞くと、安価な中古端末を『購入』しているケースが多くありました。そこで懸念したのが故障のリスクです。以前は診療科ごとの共用PHSでしたが、『誰のものでもない端末』は扱いが雑になりがちで、故障が耐えませんでした。中古スマホを買い切って、壊してしまった場合、修理や代替品の手配を考えると、業務にも影響が及びます。そうしたリスクにも対応できる方法を探しました」

「購入」でも「新品」でもない選択肢を模索するなか、浮上してきたのが「中古端末レンタル」という解決策でした。

「レンタルであれば、新品で購入した端末を3年間使用する場合に比べて、約956万円の削減が見込めました。また、使わなくなったら返却するだけなので、データ消去や廃棄の手間・費用が一切かからない点も大きな魅力でした。端末購入に充てる予定だった浮いた予算は、次回のレンタル契約費用に回せるため、経営的にも合理的な判断になりました」

Web検索や同業者へのヒアリングを経て、田場様が選んだのが株式会社Belongが提供する法人向けスマホレンタルサービス「Belong One」でした。

大手商社グループの信頼が端末導入の意思決定を後押し

「医療現場だからこそ信頼性の高い企業との取引が求められる」と語る田場様

中古スマホのリユース大手や老舗企業のサービスもあるなか、Belong Oneを選んだ理由を田場様は次のように語ります。

「第一に、サービスサイトの情報が非常に充実しており、中古端末への不安を払拭する安心感がありました。中古端末がどのようなプロセスで検品され、どのような基準をクリアして届くのか。その手順がここまで明確に示されているサイトはほかにありませんでした。『本当に中古で大丈夫か?』と疑念を持つ院長や理事会に説明する際にも、この透明性は大きな説得材料になりましたね」

また、運営企業が伊藤忠グループである点も組織決定において極めて重要な要素でした。

「医療業界では、歴史ある医療機器メーカーや製薬会社との信頼関係を重視します。IT企業に対しても『この会社は10年後も存続しているのか』と継続性に不安を抱く声も少なくありません。その点、Belongの『伊藤忠グループ』という看板はそうした懸念を解消してくれました」

問い合わせ後のレスポンスの速さや、修理・交換のフローが確立された分かりやすい料金体系も、導入を後押しする決め手となりました。

さまざまな課題を乗り越えた2024年、新しい電子カルテシステムの導入とともに『Belong One』による端末レンタルがスタート。田場様は「実際に届いた端末の品質にも驚いた」と振り返ります。

「厳正な検品基準は確認していましたが、予想以上に状態の良い端末が届きました。おそらく、現場の職員のほとんどが中古端末だとは気づいていないと思います。バッテリー容量も充分で、導入から約2年が経過した現在も問題なく使用できています」

さらに、端末を「個人貸与」にしたことで、現場の意識にも劇的な変化が生まれました。

「自分専用のiPhoneを手にした職員たちは、驚くほど端末を大切に扱ってくれています。なかには、自分のお気に入りのシールを貼って愛着を持って使っている職員もいるほどです。自分の道具として大切にする文化が根付いたことで、故障率も大幅に下がりました」

理想だった「1人1台」の環境は、単なる利便性だけでなく、職員のモチベーションと端末の長寿命化という副次的効果ももたらしたのです。

チャット連携がもたらした現場の機動力

業務で使用している端末にはスタッフ用のストラップが装着されている

『Belong One』によるレンタル端末で新しい電子カルテシステムの運用を開始してから約2年。いまや同院にとってスマートフォンは“欠かせないツール”になっています。

「最大の成果は、スタッフが手元で電子カルテを確認できるようになったことです。ナースステーションにおかれた共用の端末まで往復する必要がなくなり、患者さんのそばにいられる時間が増えました。また、リハビリスタッフや急性期病棟の看護師など、“移動が多いスタッフ”から好評なのが、チャット機能です」

これまでは、至急の連絡はPHSでの「電話」が主役でした。しかし、電話は相手の手を止めてしまうだけでなく、聞き間違いや伝え漏れのリスクも伴います。

「電話のように相手の作業を止めてしまうこともなく、記録が文章として残るので伝え漏れも防げています。『今、手が離せないので後で行きます』といった細かな連携がリアルタイム、かつテキストで正確に残る。全体的にコミュニケーションコストが大幅に下がっていますね」

また、プリザンターで作成したWEBデータベースに院内研修動画や会議資料をスマートフォンでいつでも閲覧できる環境を整備。これにより、各自のタイミングで目が通せるだけでなく、大幅なペーパーレス化も実現しました。

現場で臨床工学技士としても活動する情報企画室の角屋様は、個人貸与のメリットを次のように語ります。

「レンタルしているiPhone SE(第2世代)は、医療現場に最適でした。指紋認証機能に対応しているため、本人以外のアカウントが電子カルテにアクセスしてしまうリスクを防げます。共用の端末で見ていた頃は、一人の職員がログイン状態のまま、別の職員が操作してしまうこともありましたが、そのリスクが解消されました。指先ひとつで自分のアカウントに即座にアクセスできるため、一分一秒を争う現場において、ログインのわずかなタイムラグがなくなる意義は非常に大きいですね」(角屋様)

また、同院が運営する老健施設では、個人端末でナースコールが受けられるシステムを採用。以来、ナースコールの対応が介護士同士でバッティングする状況も改善されました。

現場発のアイディア広げる医療DXの可能性

今後の具体的なアイディアについても語る田場様

医療DXに邁進する東香里病院では、新たな取り組みも始まっています。

「最近では現場の看護師から『点滴の滴下速度を計算できるアプリがほしい』といった具体的な相談を受けるようになりました。端末が身近にあり、デジタルツールの便利さを体感したからこそ、『もっとこうしたい』という現場発のアイデアが生まれやすい環境になっています。今後も、そうした現場の声をすくい上げ、ひとつひとつ実現していきたいですね」(田場様)

1億円の見積もりという「壁」を、中古端末レンタルという「知恵」で突破した東香里病院。医療DXがもたらした創造的な余白は、同院の可能性をさらに広げ続けていきそうです。